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Column · 自治体防災 · 情報伝達

「防災行政無線が聞こえない」——住民への情報伝達手段、5つを比較する。

「放送が聞こえなかった」という住民の声は、全国の自治体に共通する課題です。住宅の高気密化と豪雨時の遮音で、屋外スピーカーの声は届きにくくなっています。この記事では、避難情報・行政情報を住民に届ける5つの手段を、屋内到達性・スマホの要否・双方向性・コストの観点で比較します。防災・情報担当者の検討材料としてお使いください。

公開: 2026-07-04 · 執筆: しあわせもの工房(自治体向けIoT告知端末の開発チーム)
自治体がスマホからお知らせメッセージを送信し、住民宅のIoT告知端末から音声で流れる仕組みの図
スマートフォンを持たない住民にも、音声で行政情報が届く仕組みの一例(LTE型IoT告知端末)
01 · Background

なぜ「聞こえない」のか。構造的な3つの理由。

1つ目は、住宅性能の向上です。高気密・高断熱住宅やペアガラスの普及により、屋外スピーカーの音声は室内までほとんど届かなくなりました。冷暖房で窓を閉め切る生活が標準になったことも拍車をかけています。

2つ目は、天候との相性です。豪雨・暴風のときほど伝えるべき情報は増えるのに、雨音と風でスピーカーの音声はかき消されます。「一番聞いてほしいときに、一番聞こえない」という構造的な弱点です。

3つ目は、聞き手の高齢化です。加齢により高音域から聴力は低下し、反響した屋外放送の聞き取りはさらに難しくなります。聞き返す手段がなければ、「何か放送していたが内容は分からなかった」で終わってしまいます。

つまり「スピーカーを増やす・音量を上げる」だけでは解決しません。屋内に・確実に・分かる形で届ける別経路が必要です。以下、代表的な5つの手段を見ていきます。

02 · Comparison

5つの伝達手段を一覧で比較。

手段 屋内到達性 スマホ・操作の要否 双方向性(安否確認) インフラ・コスト
① 戸別受信機 高(屋内で受信) 不要(自動受信) 基本は受信のみ 端末が高額になりがち+送信側の無線インフラが前提。難聴地域では中継整備も
② 防災ラジオ 中(自動起動型なら高) ほぼ不要 受信のみ 端末は比較的安価。コミュニティFM等の放送インフラが前提
③ 登録制メール・防災アプリ 高(手元に届く) スマホ必須+事前登録 アプリによっては可 低コスト。ただしスマホ非保有層(特に高齢者)には届かない
④ SNS・広報車・電話応答 中〜低 SNSはスマホ前提 なし 低コスト。補完手段としては必須だが、単独では網羅できない
⑤ LTE型IoT告知端末
(マゴスピーカー等)
高(屋内で音声受信) 不要(自動で音声再生) あり(ボタンで安否応答・救助要請) 送信側の無線インフラ不要(携帯回線を利用)。工事不要で設置。交付金活用の可能性あり

※各手段の仕様・費用は製品・地域・契約により異なります。実際の検討では複数手段の組み合わせ(情報伝達の多重化)が基本です。

03 · Details

それぞれの特徴と、導入時のつまずきポイント。

Method 01

戸別受信機 — 確実だが、コストが最大の壁

防災行政無線の放送を各家庭の屋内で受信できる、最も直接的な解決策です。操作不要で自動的に放送が流れるため高齢者にも確実に届きます。一方で端末価格が高額になりがちで、全戸配布には大きな予算が必要。また電波の届きにくい地域では中継局やアンテナの追加整備が必要になり、導入のハードルをさらに上げます。

Good

  • 屋内で自動受信、操作不要
  • 既存の防災行政無線と直結

Weak

  • 端末・整備コストが高額
  • 電波不感地域では追加工事が必要
  • 原則、受信のみ(安否確認はできない)
Method 02

防災ラジオ — 安価だが、放送インフラが前提

緊急放送時に自動で電源が入り最大音量で流れる「自動起動式防災ラジオ」は、戸別受信機より安価な代替として多くの自治体が配布しています。ただしコミュニティFMなどの放送網が地域にあることが前提で、放送局のカバーエリア外では使えません。また受信専用のため、住民側からの発信(安否伝達)はできません。

Good

  • 端末が比較的安価
  • 自動起動型なら操作不要

Weak

  • 地域の放送インフラが前提
  • 受信のみの一方向
Method 03

登録制メール・防災アプリ — 低コストだが「届かない層」が残る

整備コストが低く、文字で正確に伝えられ、手元のスマホに直接届く——現役世代への伝達手段としては最有力です。問題はスマートフォンの保有と事前登録が前提であること。避難行動要支援者の中心である高齢者層ほどスマホ保有率・アプリ登録率が低く、「最も届けたい人に届かない」というジレンマを抱えます。

Good

  • 低コストで即導入できる
  • 文字で正確に伝わる・聞き逃しがない

Weak

  • スマホ非保有層に届かない
  • 事前登録率がなかなか上がらない
Method 04

SNS・広報車・電話応答サービス — 必須の補完手段

SNSでの発信、広報車の巡回、放送内容を電話で聞き直せる自動応答サービスなどは、どの自治体でも組み合わせるべき補完手段です。ただし広報車は豪雨時に住民の元へ到達しにくく、SNSはスマホ前提、電話応答は「住民側が能動的にかける」必要があるため、プッシュ型の主経路にはなり得ません

Good

  • 低コスト・既存資源で始められる
  • 多重化の一翼として有効

Weak

  • 単独では網羅性がない
  • 受け手の能動的な行動が前提
Method 05

LTE型IoT告知端末 — 無線インフラ不要で、双方向

携帯電話網(LTE)を使って自治体からの音声情報を屋内に届ける告知端末です。私たちが技術開発に携わるマゴスピーカーはこのタイプで、防災行政無線のような送信側インフラの整備が不要。携帯回線が届く場所なら、コンセントに差すだけで設置が完了します(LTE Cat M1モジュール内蔵・工事不要)。

最大の特徴は双方向性です。自治体からの避難情報・行政情報が自動で音声再生されるだけでなく、住民は「無事」ボタンを押すだけで安否を返答でき、救助要請や肉声メッセージの送信も可能。内蔵バッテリーで停電時も稼働し、人感センサによる日常の見守りも兼ねます。通信SIM内蔵の防災機器として、国の交付金制度等の補助対象とすることが可能な場合もあります。現在、全国7自治体に導入されています(2026年5月時点)。

災害時に自治体が安否確認メッセージを送信し、高齢者が無事ボタンを押すだけで応答できる双方向の仕組みの図
災害時の一斉安否確認 — 「ご無事ですか?」が音声で流れ、住民はボタンひとつで応答できる

Good

  • 送信側の無線インフラ整備が不要
  • 工事不要・コンセントに差すだけ
  • 双方向(安否応答・救助要請・肉声伝言)
  • 停電時もバッテリーで稼働
  • スマホ不要・操作はボタンのみ

Weak

  • 携帯回線の圏外地域では使えない
  • 端末・通信費の予算措置が必要(交付金活用の検討余地あり)
Case · 実際の活用例
能登半島地震では、この仕組みによる安否確認が実際に行われた。

独居高齢者・高齢者世帯への一斉安否確認にマゴスピーカーが活用され、その効果が確認されています。また福井市殿下地区(人口の約6割が高齢者)では、老朽化した有線放送の代替として2023年12月に試験導入。普段は地域行事の情報を音声で届け、緊急時には避難情報の配信と安否確認に使われています。導入事例の詳細はこちら →

04 · How to choose

結論:3つの質問で絞り込む。

唯一の正解はなく、「誰に届いていないのか」から逆算するのが検討の出発点です。

Q1. 届いていないのは、どの層ですか?
現役世代 → 登録制メール・アプリ(③)の登録率向上が最優先。スマホを持たない高齢者 → 受信操作が不要な ①②⑤ から選びます。
Q2. 「伝える」だけで足りますか? 安否確認まで必要ですか?
伝達のみ → ①②も候補。災害時の安否確認・救助要請まで一体で行いたい → 双方向の⑤が唯一の選択肢になります。避難行動要支援者名簿の対象者への配布から始める自治体もあります。
Q3. 送信側のインフラ(無線・放送網)は整っていますか?
防災行政無線が健在で電波も届く → 戸別受信機(①)が素直です。無線の老朽化・難聴地域・有線放送の廃止が課題 → インフラ不要のLTE型(⑤)が、更新費用をかけずに導入できる代替になります。
05 · FAQ

よくある質問

Q. 戸別受信機とLTE型IoT告知端末の一番の違いは?
A. 通信経路です。戸別受信機は自治体の防災行政無線の電波を受信するため送信側のインフラが前提ですが、LTE型は携帯電話網を使うため無線インフラの整備・更新が不要です。加えてLTE型は双方向通信(安否応答・救助要請)ができる点が大きく異なります。
Q. 携帯の電波が弱い山間部でも使えますか?
A. 携帯回線の圏内であることが前提です。マゴスピーカーはNTTドコモ・ソフトバンク・KDDIのトリプルキャリア対応SIM(MEEQ SIM)を採用しており、地域ごとに最も電波状況の良いキャリアを利用できます。導入前の電波調査もご相談いただけます。
Q. 財源はどう確保すればいいですか?
A. 通信SIMを内蔵した防災機器として扱われることで、国の交付金制度等の補助対象とすることが可能な場合があります。対象制度や適用条件は状況により異なるため、個別にご相談ください。
Q. まず小規模に試すことはできますか?
A. できます。工事が不要なため、特定地区・避難行動要支援者に絞った試験導入から始められます。福井市殿下地区の試験導入もこの形です。実証実験の設計からご一緒できます。
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Next Step

自治体の状況に合わせた検討材料を、無料でご提供します。

この記事を書いたのは、IoT告知端末「マゴスピーカー」の技術開発チームです。
技術仕様のご説明・実証実験の設計・交付金活用のご相談まで、しあわせもの工房・クレバーラクーン連携チームがお答えします。

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